仙台泉西部を舞台に活動する「KAMURIコミュニティプロジェクト」の歩みをたどる連載。
今回は、毎年秋に開催されている「IZUMI!コメフェス」の準備について紹介します。
たくさんの人でにぎわう開催当日の裏側では、どのような準備が行われているのでしょうか。
KAMURIコミュニティプロジェクトの時さんに、開催までの動きや、これまでの経験から変えてきたこと、そして2026年のコメフェスに向けて現在進んでいる準備について伺いました。
コメフェスが終わった翌月から、次の準備が始まる
年に一度開催されるコメフェス。次の開催に向けた準備は、実は前回の開催が終わって間もなく始まっています。
いつ頃から動き始めるのか、時さんに聞きました。
コメフェスの準備は、開催が終わった翌月の11月頃から始まります。
一番最初に取りかかるのは、助成金をいただいている団体への申請書類の作成です。
また、これも次回に向けた準備の一つだと思いますが、開催時に来場者の皆さんからいただいたアンケートを集計し、その結果を見ながら「次はどこを改善したらいいか」「どんなことを取り入れたら、もっと楽しんでもらえるか」ということも考えています。
その意味では、コメフェスが終わったところから、もう次のコメフェスが始まっているような感覚です。
5〜6人で進める、開催までの準備
そこから開催までには、どれだけの準備があるのでしょうか。
まずは会場の確保です。会場をお借りしているJAさんにお願いし、私たちが希望する開催日の予定を空けていただいています。

コメフェスは基本的に10月第4土曜日の開催と決めていますが、この時期はちょうどお米の収穫時期と重なります。会場ではお米の計測なども行われているため、JAさんの業務の邪魔にならないよう調整しながら会場を使わせていただいています。
その後、出店者さんを集めていきます。
これまで出店された方の中には「次回もぜひ出たい」と言ってくださる方が多いので、まずはそうした方々にお声がけします。
そのうえで、その年のコメフェスでどんなことをしたいかをメンバーで話し合い、その内容に合った出店者さんを探したり、「出店したい」とお問い合わせをいただいた方や、地域の方からご紹介いただいた方などを検討しながら、全体の出店者を決めていきます。
出店者さんがある程度決まると、次は会場レイアウトです。
「どの場所にどのお店を配置するか」「必要なスペースは確保できるか」などを考えながら、一店舗ずつ配置を決めていきます。
そのほかにも、ステージの手配、テントや椅子、簡易トイレなどのレンタル、駐車場警備員の確保、チラシ・ポスターの作成、後援名義の申請、衛生関係の許可、火気使用の申請、当日配布する会場案内図の作成、ボランティアの募集、スタッフ用のお弁当や飲み物の手配、米ビールの仕込みや販売をお願いする店舗との調整、シャトルバスの手配、備品の確認や買い出しなどがあります。
こうした準備を、基本的には5〜6人ほどのメンバーで進めています。
出店者との調整、そしてボランティアの確保
数ある準備の中でも、特に大変なのが出店者との調整だといいます。
コメフェスは屋外イベントのため、「電気を使いたい」というご希望があっても設備上対応できない場合があります。また衛生許可の関係で、販売したくても販売できない商品もあります。
さらに「コメフェス」というイベントの趣旨がありますので、地域の農産物とまったく関係のない商品については難しい場合もあります。
そういった条件を一つひとつ確認しながら、どうすれば出店していただけるかをメンバーで考え、工夫しています。
もう一つ苦労しているのが、ボランティアの確保です。
10月は各地でイベントが多く、学校の行事や部活動の大会なども重なる時期です。保護者の方々も予定が入っていることが多く、なかなか人が集まりません。
インターネットでも募集していますが、会場周辺は公共交通機関が少なく、バスも1時間に1本ほどという地域ですので、交通面も含めてボランティアに来ていただくハードルが高いところがあります。
第1回は夜9時まで。前日準備の大仕事、白線引き
そして、来場者から最も見えにくい準備の一つが、前日の会場づくりです。
中でも時さんが「特に大変」と挙げたのが、駐車場や各出店スペースの白線引きでした。
会場はJAさんのお米の計測などにも使われているため、前日も多くの車が出入りしています。その邪魔にならない場所から少しずつ作業を進めます。

しかも、このライン引きに集まれる人数が少なく、毎年3人程度で作業することも珍しくありません。
第1回の開催時には、朝8時半頃から準備を始め、駐車場のライン引きがすべて終わったのは夜9時頃でした。暗くなってからは、車のライトで照らしながら距離を測り、ラインを引いたこともあります。
現在は過去の経験をもとに作業の進め方も少しずつ改善していますが、前日の会場準備は今でもかなり大きな作業の一つです。
そのほかにも、テントや看板の設営、お振る舞い用の新米を研ぐ作業、餅つき用のお米や餅まき用のお餅・お菓子の準備、協賛企業の看板作り、各所からお借りする什器の受け取りなど、前日だけでもたくさんの準備があります。
お客さんが来る当日の数時間のために、その前にはかなり長い時間をかけて準備をしています。
KAMURIだけでは開催できない
こうした準備には、地域のさまざまな人たちが関わっています。
コメフェスは、KAMURIのメンバーだけでは開催できません。本当にたくさんの地域の方に支えていただいています。
例えば、餅まきで使うお餅はJAの女性部の皆さんにご協力いただいています。地域の農家の方々を中心とした皆さんにお手伝いいただいており、とてもありがたく感じています。
餅つきで使用する杵と臼も、地域の農家さんからお借りしています。

ステージとして使っている大型トラックについても、私たちのメンバーには大型免許を持っている人がいないため、地域の方にご協力いただき、一緒にトラックを取りに伺っています。
前日の準備も地域の方にお声がけし、一緒に作業しています。
ただ、前日準備は金曜日ですので、お仕事のある方が多く、どうしても参加できる人数が限られます。地域の方に声をかけても、参加できる方が1〜2人ほどに限られる年もあります。
また、コメフェスで使用するお米そのものも、地域の農家さんにご協力いただき、それぞれ購入させていただいています。
出店者さんに料理などで使っていただくお米も、その中から分けてお渡ししています。
そう考えると、コメフェスはKAMURIが開催しているイベントというより、地域の農家さんや出店者さん、ボランティアの皆さん、JAさんなど、本当に多くの方と一緒につくっているイベントだと思います。
今年は、より多くの人にコメフェスの準備や運営に関わってもらおうと、Instagramなどでもボランティアを募集しています。
やってみて分かったことを、次の年へ
コメフェスは、毎年同じ形で開催されてきたわけでもありません。
実際にやってみて分かったことや、来場者から寄せられた声をもとに、少しずつ変えてきました。
第1回では「お米のつかみ取り」を無料で行いました。

ところが、想像以上にたくさんの方に来ていただきました。
そこで第2回は大人のみ有料にしましたが、それでも非常に多くの方が並び、用意したお米が足りなくなってしまいました。そのため、その後はお米のつかみ取り自体を行わないことにしました。
新米のお振る舞いで使用する器も変わりました。
第1回では、できるだけゴミを出さないイベントにしたいという思いから竹の器を販売し、その器にお振る舞いのご飯を入れていました。
竹の器を購入されない方には、経木の上にご飯をのせてお渡ししていました。
ただ、竹の器は制作準備に非常に時間がかかりました。

また、経木についても塩釜の材木屋さんに作っていただいていたのですが、かなり負担をかけてしまうことが分かり、その後は別の方法に変更しました。
タイムスケジュールも経験をもとに変えています。
第1回では、一日を通して満遍なくイベントを配置していました。
しかし実際に開催してみると、午前中に来場者が集中する傾向があることが分かりました。
そこで第2回以降は、午後にもできるだけ長く会場を楽しんでいただけるよう、人が集まりやすいイベントを午後に配置するようになりました。
特に餅まきはイベントの最後に行うことで、皆さんに最後までコメフェスを楽しんでいただけるよう工夫しています。
反対に、お昼の時間帯は皆さんが食事をされる時間ですので、慌ただしい企画ではなく、音楽などを聴きながらゆっくり過ごしていただけるようなステージを組むようにしています。
出店条件についても、来場者アンケートに多く寄せられた「地域の野菜も買いたい」という声を受け、泉西部地域の農産物を使っている人にも広げました。
それでも、イベントの基本にあるのは「コメフェス」。現在もお米を中心とした商品展開を大切にしています。
毎年開催して終わりではなく、その年に実際にやってみて分かったことや、来場者の皆さんからいただいた声を次の年に反映しながら、少しずつ今の形になっています。
2026年は、若手農家との新しいつながりも
そして現在、2026年のコメフェスに向けた準備も進んでいます。
今年は農家の出店を増やし、新しい取り組みとして特別枠を設け、宮城県内で活動する若手農家5者ほどに出店いただく予定です。
目的の一つは、若手農家の応援と交流の機会づくりです。
現在、農業の世界でも高齢化が進み、若い世代の農家さんは決して多くありません。
そのような中で農業を続け、頑張っている若い農家さんたちを応援したい。そして、何か困ったことがあった時に情報交換ができるようなネットワークをつくれたらいいのではないか、という意見がKAMURIのメンバーの中から出てきました。
そこで今回、泉西部地域のコメフェスに若手農家さんをお呼びし、「泉西部では地域のお米や農産物を使って、こんなイベントを行っている」ということを知っていただく機会をつくることにしました。
もちろん、泉西部地域以外の農家さんに出店していただくことについては、メンバーの中でもいろいろと考えました。
コメフェスはあくまでも泉西部地域を大切にしているイベントですので、今回は通常の出店枠とは分けた「特別枠」としてお呼びしています。
ただ、この出会いをきっかけに泉西部地域の農家さんと県内の若手農家さんとのつながりが生まれ、将来的に何か一緒に取り組めることが出てくるかもしれません。
そうした新しいご縁や相乗効果が生まれたら、とても面白いのではないかと思っています。
また今年は、初めてコメフェスに出店するお店も数店舗あります。
ありがたいことに、「コメフェスに出たい」と声をかけていただき、出店をお願いしたお店もあります。
毎年出店してくださる方からも、開催後に「来年も出たい」と言っていただくことが多く、それは私たちにとってとてもうれしいことです。
出店する側の皆さんにもコメフェスのファンになっていただき、そこからまた新しいお店や人とのつながりが広がっていけばいいと思っています。
そして、米ビールも今年も仕込みに行く予定です。
地域でつくられたお米がビールの副原料となり、一つの商品として皆さんに飲んでいただけるという、とても貴重な取り組みです。
大人の方には、ぜひ今年の米ビールも手に取っていただけたらうれしいです。
開催当日に見えるコメフェスの裏側には、前年の11月から続いてきた準備があります。
会場を確保し、出店者と調整し、必要なものを手配する。開催前日には地域の人たちも加わって会場をつくり、実際に開催して分かったことは、また次の年へつないでいく。
「コメフェスが終わったところから、もう次のコメフェスが始まっているような感覚です」
最初に時さんが話していたこの言葉が、一年間の準備をたどってみるとよく分かります。


