静けさに包まれる桜の名所、白藤観世音の春景色

みる


泉区小角の「白藤観世音」で、今年も桜が見頃を迎えました。

県道や幹線道路からは外れた七北田川沿いの静かな場所にあるこの観音堂は、観光地化されていない分、訪れる人も少なく、落ち着いた空気の中でゆっくりと桜を楽しめます。

堂の前に咲く桜は、白に近い淡い色合いが特徴的で、枝ぶりもよく、古い木造建築と相まって情緒ある風景をつくり出していました。2025年の撮影時点(4月中旬)では、ちょうど満開のタイミング。境内には、舞い散った花びらが石畳にうっすらと重なり、春の静けさを感じる一角となっていました。

歴史と伝説が息づく場所

白藤観世音には、坂上田村麻呂にまつわる伝説が残されています。

この地を訪れた田村麻呂の愛馬が毒草を食べて命を落とし、その後脚をこの場所に埋め、墓標代わりに持っていた“白藤のムチ”を逆さに突き立てたのだとか。その白藤は根付き、大木へと育ったと伝えられています。

また、白藤観音は腰から下の病に霊験があるとされ、昔は女性が「腰まき」、男性が「ふんどし」を借りていき、病が治ると新しいものを二つ作って返すという風習もあったそうです。戦前までは毎日のようにお参りの人が絶えず、旧暦4月8日の縁日には遠方からの参拝者でにぎわったと記録されています。

今の白藤と桜

かつて生えていた“伝説の白藤”は、薬になると信じられ、皮を剥がして持ち帰る人が増えたことで枯れてしまい、現在の藤の木は後年植えられたものといわれています。

それでもこの場所は今も、人知れず春を迎え、静かに花を咲かせています。桜もまた、この地の記憶をやさしく引き継ぐように、今年も変わらぬ姿を見せてくれました。

アクセス情報

白藤観世音へは、泉自動車学校手前の横道を入り、道なりに進んだ先の右手にあります。
貴布禰神社へ向かう道の途中でもあり、あわせての訪問もおすすめです。

泉ヶ岳の山並みを背景に、田畑と古社と桜が並ぶ風景は、まさに泉西部ならではの春の情景。
華やかさはないけれど、心に残る景色を求めて訪れてみてはいかがでしょうか。

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