仙台市泉区、泉ヶ岳の麓に広がる根白石地区。古くからの歴史を刻むこの地に、江戸時代(享保4年)から大切に守られてきた貴重な「涅槃図(ねはんず)」があります。
毎年2月の「涅槃会(ねはんえ)」に合わせて公開されるこの仏画には、現代の私たちにも通じる深い物語が描かれていました。

1. 一般的なサイズとは一線を画す、畳三畳分の存在感
お部屋に足を踏み入れると、壁に掲げられた大きな絵画が目に飛び込んできます。


「享保4年(1719年)に作られたもので、今から約300年くらい前のものです。大きさは畳三畳分ほど。他のお寺では普通の掛け軸サイズが多く、このサイズは結構珍しいと思います」
そう語るのは、満興寺の時(とき)副住職。お釈迦様の入滅(最期)を描いたこの絵には、人間だけでなく、動物や聖なる生き物までもが集まっています。
2. 300年前の色彩。時副住職に聞く「鑑賞のポイント」
300年という月日を経てもなお、当時の色彩を留めている満興寺の涅槃図。副住職に、初めて見る方でも楽しめる「注目ポイント」を教えていただきました。
夜空に浮かぶ「黒い満月」

「お釈迦様が亡くなった日は満月であったと伝えられています。この絵でも、夜空に浮かぶ月が描かれています」
雲の上から駆けつける「摩耶夫人(まやぶにん)」

お釈迦様の実母である摩耶夫人は、お釈迦様を産んで7日目に亡くなられました。この絵では、我が子の死を聞きつけた母が、雲に乗って天女たちと共に薬を持って現れる姿が描かれています。 「しかし、もう間に合わないと思い、雲の上から薬を投げるが、木の枝に引っかかってしまった……という切ないエピソードも残されているんですよ」
猫が描かれない理由? 嘆き悲しむ動物たち

「涅槃図には多くの動物が描かれますが、実は『猫』はあまり描かれないという話があります。木に引っかかった薬をネズミが取りに行こうとした際、途中で猫に食べられてしまったという言い伝えがあるためです」 満興寺の涅槃図をじっくり眺めて、どんな動物が描かれているか探してみるのも醍醐味です。
絵師の腕の見せ所「阿難(あなん)尊者」

お釈迦様の弟子の中でも「絶世の美男子」とされた阿難尊者。彼をいかに綺麗に描けるかが、当時の絵師の腕の見せ所だったそうです。その表情にも注目です。
3. いのちの終わりを通して、今を見つめる
涅槃図は、単に死を描いたものではありません。 「“いのちの終わりを通して、教え(無常・慈悲・悟り)を感じ取るため”の仏画です」と時副住職。
賑やかな仙台市中心部から車でわずか30分。根白石の静寂の中で、300年前の絵図と向き合う時間は、忙しない日常で忘れがちな「今ある命の尊さ」を静かに問いかけてくれます。
冬の澄んだ空気とともに、歴史が息づく満興寺へ、心静かな時間を過ごしに出かけてみませんか。
【特別公開のご案内】
- 場所: 満興寺(仙台市泉区根白石字町東11)
- 公開期間: 2月1日〜2月15日ごろ(※詳細な時間は事前にお寺へご確認ください)
- アクセス: 地下鉄泉中央駅から車で約20分。駐車場あり。
取材・写真協力:満興寺 時副住職

