3月下旬、雪の残る芳の平(よしのたいら)湿原を訪れたときは、まだ木々は眠っているようで、ミズバショウも芽吹き始めたばかりでした。
あれから季節は少しずつ進み、日中の気温も徐々に上がってきました。今回は4月上旬の晴れた日に現地を再訪。
木々の合間に差し込む光が増え、地面の雪はすっかり姿を消し、湿原全体が“春に向かって動き出している”のを感じました。
湿原を歩くと見えてくる変化
湿原入口の案内板には、「花の見頃:4月中旬〜5月上旬」と記載がありますが、場所によってはすでに葉の展開が始まっています。
地面から顔を出したミズバショウの新芽は、あちこちに点在し、日当たりのよい場所ではすでにしっかりした葉を広げ始めている株も見られました。

▲落ち葉の間から姿を見せる若い葉。鮮やかな緑色が目を引きます。

▲密集はしていないものの、一定の間隔で新芽が確認できます。
この日は風も穏やかで、湿原全体がとても静かでした。
足元には湿った落ち葉が残り、ところどころに水たまりや小さな沢が現れており、そこにもミズバショウの姿が見えました。
少しだけ咲いた、白い花
まだ数は少ないものの、開花した株もいくつか確認できました。

白く見える部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる葉の変形で、花のように見えるものです。中心の黄色い部分が本来の花にあたり、小さな花が密集して咲いています。
この時期は花と葉のバランスがよく、ミズバショウらしい姿を見られる貴重なタイミングといえるかもしれません。
群生というより、「芽吹きの広がり」

▲沢のそばにも新芽がちらほらと。

▲群生の“はじまり”のような風景。


▲株によってはすでに葉が数枚展開しはじめています。
一面に広がる「群生」の状態ではまだありませんが、湿原内のあちこちに点々と広がるミズバショウの新芽は、これから数日〜1週間ほどで一気に広がっていく兆しを見せていました。
この段階を記録しておけるのも、定点的な観察の楽しさのひとつです。
保全と観察マナーを忘れずに
湿原は仙台市指定天然記念物として保護されており、案内板やロープなども整備されています。
訪れる際は以下の点を意識して楽しみましょう:
- 木道や通路からは外れない
- 植物には触れない・持ち帰らない
- 写真撮影も最低限の動きで
- ゴミは必ず持ち帰る
現地の環境はとても繊細です。
目に見えない小さな変化が、数年後の風景を左右するかもしれません。
4月中旬、花のピークがやってくる
案内板上では5月上旬までが見頃とされていますが、実際には4月中旬〜下旬あたりが開花のピークといえるかもしれません。4月下旬になると葉がどんどん大きくなり、白い仏炎苞が見えづらくなることもあります。

「花らしい姿」を見たい場合は、できれば4月10日〜20日ごろの訪問をおすすめします(天候次第で前後する可能性あり)。
前回の訪問(3月下旬)と比べると、湿原の空気感そのものが変わっているのが印象的でした。
気温や光、地面の湿り気、芽吹きのスピード…。
自然の中では、たった数日、数週間でも確かな変化があることをあらためて感じさせられます。
季節が進んでいく様子を“少し早め”に観察できる場所としても、芳の平はとてもおすすめです。