今回は、宮城県仙台市に本社を置き、スキー用ワックスの製造販売などを行っている企業・株式会社ガリウムについてご紹介したいと思います。
株式会社ガリウムは、1998年の長野オリンピックから、2022年に開催された北京オリンピックまで、冬季五輪における技術協力も手掛ける企業です。
今回は、営業統括部長の佐藤純一さんにインタビュー形式でお話を伺いました。佐藤さんは、オリンピック スキー・ノルディック複合の技術スタッフをされた経歴を持つ方です。
根白石のガリウム本社に伺いお話を聞かせていただきました
Q:なぜ根白石に会社を移設したのでしょうか?
旧ガリウム工場は秋田県の小坂町にありました。仙台だと交通の便もよく、営業にも、ゲレンデに行くにも便利です。
工場を秋田から仙台に移転する前は仙台市中心部の片平、花京院と市街地に本社を置いていました。その後、工場の移設に伴い、この根白石に本社も移転しました。
一部、石油系溶剤を使用する製品もあるので、市街地では危ないというのも理由の一つですが、最大の理由は、「このロケーションを気に入った社長の一目惚れ」です。
Q:なぜ、ワックスにガリウムを入れたのでしょうか?
1981年、スキー選手として活躍していた技術者が、ガリウムの試験分析時に誤って机上にこぼしてしまいました。慌ててガリウムを拭くと、よく延びるし水も弾く。そしてツルツルした感触もあった。
「これはスキーのワックスに使えるのでは・・」と直感したそうです。
それから7年の研究・開発を重ね、1988年に世界初となるガリウムを配合した「GALLIUM WAX」が誕生。まさに失敗は成功の基ですね。
Q:新商品の開発というのはどのくらい大変なのでしょうか?
毎年、新商品開発のために数十種類のワックスを試します。雪質や雪の塩分濃度の違いから、太平洋側の山で良い結果が出ても、再度、日本海側の山でテスト走行。毎年何百回と試すので、体力勝負なところもあります。
Q:トップレーサーも一般ユーザーも使っているワックスは同じなのでしょうか?
はい!基本的には同じです。一口に「ワックス」と言っても、溶ける温度、冷えて固まるまでにかかる時間がワックスごとに異なります。一般ユーザーが使いやすいように工夫されたワックスもありますし、トップレーサーは何層にも分けてワックスを塗ります。
ガリウムでは、それぞれの用途に合わせてワックスを選べるように様々な種類のワックスを製造しています。
2022年の北京オリンピックにも帯同
1998年の長野オリンピックから、今年開催された北京オリンピックまで冬季五輪に技術協力をしています。
ただワックスを提供するだけでなく、試合当日の雪質、気温などに合わせてワックスを調合し、選手がベストな状態で試合に臨めるように技術協力をしています。
ノルディック競技においては、登り坂が得意な選手か、下り坂が得意な選手かなどに合わせてワックスも使い分ける場合もあるそうです。
循環型社会の実現を目指して!
携帯電話やパソコン、デジタルカメラ等のハイテク機器には、様々なレアメタルが使用されています。
しかし、日本には天然レアメタル資源がほとんどありません。そこで、グループ会社のガリウムECOマテリアル(株)では、不要になったパソコン等を回収・再利用した「循環型社会」の実現に取り組んでいます。
*本社の一角に回収ブースを設置しています。
今回の取材を通して今まで知らなかったスキーワックスの世界を知ることが出来ました。徹底した温度管理のもと、職人さんの手により1つ1つ丁寧に製造されていました。
国内シェア約6割のガリウム。根白石にこんなにすごい世界的企業があるとは本当に驚きでした。
最後に今回取材を受けてくださった営業統括部長の佐藤純一さん。製品への熱い思いや、トップレーサーを陰で支える思い、そして冬季五輪の裏話も教えていただきました。
とても貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
株式会社ガリウム
会社沿革
1983(昭和58)年 スキーワックスの研究開発
1989(平成元)年 同和鉱業株式会社(現DОWAホールディングス株式会社)半導体事業部での営業開始
1991(平成3)年 同和鉱業スポーツ事業部開設
1994(平成6)年 ドウワガリウムワックス販売、株式会社設立(仙台本社)
2006(平成18)年 3月仙台工場開設
2008(平成20)年 株式会社ガリウムに社名変更
2011(平成23)年 1月 ガリウムジャパン株式会社設立
3月11日 東日本大震災発生
復興支援としてOnesHandsプロジェクト協力
5月 GENE(ガリウム直営店、チェーンナップ業務)オープン